日本のカンアオイ ~北陸・東北地方編

Asarum  L.  Sect. Heterotropa   (Aristolochiaceae) 


Sect. Heterotropa 第2弾は北陸、東北地方編です。
北国の Asarum と聞いて、誰もが思い浮かべるのは夏緑性の Sect. Asiasarum でしょう。実際、 Heterotropa が多様なエリア、という訳ではありません。もともと南方系の分類群?ということもあるのかと思います。
とはいえ、未記載の種類もポツポツといたりして、なかなか興味深くもあるわけです。

本頁についても写真が揃い次第、順次更新していきたいと思います。


Asarum fauriei Franch. 

   var. nakaianum (F.Maek.) Ohwi ex T.Sugaw. Duch.
ミヤマアオイ


ミチノクサイシンの変種という位置づけで、 萼筒が皿型で浅い。
茎を這わせて広がる特徴は同じで、いるところには群生しています。

現在の学名上だとヒメカンアオイとも変種関係になりますが、どうやら系統的には離れているようです。

カンアオイのくせにかなり標高の高いところまでいて、写真を撮ったところも2000m 付近でした。


(5. 2015 長野県)

Asarum ikegamii  (F.Maek. ex Y.Maek.) T.Sugaw.
ユキグニカンアオイ


新潟県の中越~下越と、福島県の県境付近あたりに分布。
萼裂片が白~黄色っぽいのが特徴の、どことなく爽やかな種類です。
とはいえ、色には結構変異があり、安定してない感じでした。

(5. 2019 新潟県)

Asarum megacalyx (F.Maek.) F.Maek
コシノカンアオイ


山形県~新潟県や長野県北部に分布。

名前の通り 萼筒がとにかくデカい。
北陸に分布する連中は 萼筒が大きい傾向にあり、系統的には非常に近そうです。

(4. 2014 新潟県)

Asarum yoshikawae T.Sugaw.
クロヒメカンアオイ


新潟県上越と富山県にかけて分布。

萼筒が大きい反面、開口部が小さく、非常にユニークな見た目です。
葉はかなりきつい心形をしており、他の種類とは一線を画した見た目の面白い種類でした。



(5. 2019 富山県)

Asarum sp.
エチゼンカンアオイ


福井県に分布。
長らくカントウカンアオイとは違うよね、と言われながら、未記載となっています。

実際に見たところ、確かに  萼筒開口部が白く縁どられるあたり、似ているような感じでしたが、葉は絵に描いたような矢じり形で全然違いました。
秋咲きということもあって、花筒は土中でもうグズグズボロボロでした。


(5. 福井県)

Asarum sp.
ハルザキエチゼンカンアオイ


エチゼンカンアオイと同じく未記載種となっていますが、こちらは春咲き。
両種は形態的によく似ており、かつほぼ同所的に分布しています。
何をキーにフェノロジー特性が分化したのか、ひじょーに興味深いですね。

蕾が多く、ようやく開花個体を見つけたのですが、誰かが捌いた痕が・・・( ^ω^)


(5. 福井県)