シロツブ、ハスノミカズラ、ナンテンカズラ

Caesalpinia L. → Biancaea Tod. , Guilandina L. 


個人的に好きな属から、ということで、Caesalpiniaです。
ご存じCaesalpinia は、熱帯~亜熱帯の季節林を中心に約150種程度が知られており、その多くが木本や藤本です。
いちおう Fabaceae に含まれていますが、いわゆる蝶型花冠をもつ Faboideae(マメ亜科)とは別の、 Caesalpinioideae(ジャケツイバラ亜科)というsubfamily に分類されています。
国産の Caesalpinioideae は、このほか Chamaecrista ぐらいでしょうか。

で、国内には以下の4種が知られています・・・と書こうと思ったのですが、現在、そのすべてが Caesalpinia から外されてしまっています。なんか残念。

以下、国内の旧 Caesalpinia___
Biancaea decapetala (Roth) O.Deg. ジャケツイバラ
 (旧 C. decapetala (Roth) Alston var. japonica (Sieb. et Zucc.) H.Ohashi)
Guilandina bonduc L.  シロツブ
 (旧 C. bonduc (L.) Roxb.)
Guilandina crista (L.) Small ナンテンカズラ
 (旧 C. crista L.)
Guilandina major Small  ハスノミカズラ
 (旧 C. globulorum Bakh.f. et P.Royen)

我が国で見られるいわゆるハスノミカズラは、学名がまだ確定していないようです。広義にとらえるなら、globulorum = major ということでよさそう?

現在 Biancaea には6種、Guilandia には19種が含まれてるそうな。ハスノミのことも含め、後者の方の分類はまだまだアヤシイみたいですが。
なお、Biancaea の語源は不明、Guilandina はロシアの博物学者、Melchior Wieland (1515–1589) への献名で、彼の名前をイタリア語読みしたものらしい。えぇぇ…?



Biancaea decapetala (Roth) O.Deg. 
ジャケツイバラ

deca → 10 petala → 花弁

これまで、唯一本州で拝むことのできるCaesalpinia として有名だったけど、謎の属所属になりました。とはいえ、6種からなるマイナー属だし、あいかわらず本種が最も北までいる種類のようです。
シカが忌避するため、害のひどい所では目立ちますが、散布能力の面で課題があり、そこまで広がっていないようです。
(5. 2018 静岡県)
Guilandina bonduc L. シロツブ

bonduc → ? (現地名?)

海流散布の超広域分布種。
でも、日本では八重山と小笠原諸島にわずかにみられるだけ。
彼らが今そこにいることが、海流が生み出した奇跡だということを分かって欲しいです。痛いけど。
大きな托葉がチャームポイント。
小葉もハスノミに比べるとはるかに密で数多いです。

(3. 2018 石垣島, 11. 2018 石垣島)

 Guilandina crista L. ナンテンカズラ

crista → トサカ状の

東南アジアやニューギニアにかけて分布し、国内では屋久島以南の海浜域に見られます。
バックマングローブの構成種としても有名ですね。
凶悪な逆トゲと、光沢のある葉が印象的。

(2. 2015 西表島)
 

Guilandina cf. major Small 
ハスノミカズラ

major → 巨大な

国内では沖縄本島(?)、石垣、西表、尖閣にのみ記録がある種類です。八重山諸島でシロツブと呼ばれているのはおおよそ本種。そのため、bonduc と分類が混乱していたという経緯があります。
そして未だにその渦中。分類の問題がついて回る宿命を持った種なのでした。
特に石灰岩地の林内で出会うことが多い気がします。

(11. 2018 石垣島, 2. 2016 西表島)
<Reference>
Gagon et al. 2016 A new generic system for the pantropical Caesalpinia group (Leguminosae).  PhytoKeys 71: 1-160
Gagon et al. 2013 A molecular phylogeny of Caesalpinia sensu lato: Increased sampling reveals new insights and more genera than expected. South African Journal of Botany 89: 111-127