Ajuga L. (Lamiaceae)
主に北半球の温帯域に約50種(文献によっては90種)が知られている属です。
我が国に記録のある12種+1変種のうち、1種が小笠原諸島、3種が南西諸島に分布しています。
下名は幸運なことに、これまでの人生で11種+1変種にお目にかかることができました。
A. boninsimae Maxim. シマカコソウ
A. ciliata Bunge var. villosior A.Gray ex Nakai カイジンドウ
A. decumbens Thunb. キランソウ
A. dictyocarpa Hayata オニキランソウ
A. incisa Maxim. ヒイラギソウ
A. japonica Miq. オウギカズラ
A. makinoi Nakai タチキランソウ
A. nipponensis Makino ジュウニヒトエ
A. pygmaea A.Gray ヒメキランソウ
A. shikotanensis Miyabe et Tatew. ツルカコソウ
A. taiwanensis Nakai ex Murata ヤエヤマジュウニヒトエ(ヤエヤマキランソウ)
A. yesoensis Maxim. ex Franch. et Sav. ニシキゴロモ
var. tsukubana Nakai ツクバキンモンソウ
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Ajuga ciliata Bunge var. villosior A.Gray ex Nakai
カイジンドウ
いい感じの半自然草原に生育しているちょいレアなAjuga。
分布の本場である中国では、いくつかの変種が記録されているようですが、国内のものは全てvar. villosiorとのことです。
(6. 2018 長野県) |
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Ajuga decumbens Thunb.
キランソウ
広がる走出枝が目を惹く種類。
国内ではもっともふつうにみられるAjugaで、朝鮮半島と中国にも分布しています。
南西諸島には、var. glabrata (テリハキランソウ)という毛のない変種がいるようですが、学名は裸名のまま。
また、長野県からvar. vegata (オオキランソウ)とかいう得体の知れないの変種も記録されているようです。
(5. 2012 栃木県) |
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Ajuga dictyocarpa Hayata
オニキランソウ
国内では奄美や沖永良部などに記録があり、国外では台湾、中国、ベトナムにも分布しています。
(3. 2020 鹿児島県 奄美大島) |
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Ajuga incisa Maxim.
ヒイラギソウ
北関東周辺の限られた地域にのみ知られているご当地もの。
花筒が他の種類に比べてとても長いのが特徴です。
自生地ではシカに食われて数を減らしているようでした。
(5. 2019 群馬県) |
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Ajuga japonica Miq.
オウギカズラ
ヒイラギソウと同様に、花筒の長さが特徴の種類ですが、こちらは走出枝を出します。
山歩きをしていても、そうそう見ることがないので残念。散布能力的にやむなしか。
(5. 2019 神奈川県) |
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Ajuga makinoi Nakai
タチキランソウ
関東から東海地方にかけての太平洋側の山地に分布する存在感の薄~い種類。
走出枝は出さないし、上唇が発達して2深裂、ということで、形態的にはニシキゴロモに近い感じ。
(5 2019 神奈川県) |
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Ajuga nipponensis Makino
ジュウニヒトエ
本州温帯域の落葉広葉樹林下にふつう。
名前の割に、大陸にも分布しています。
キランソウとの雑種がいて、ジュウニキランソウというそうです。
(4. 2013 茨城県) |
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Ajuga pygmaea A.Gray
ヒメキランソウ
海岸近くの草地に見られるハデハデな種類。
主に日本の南西諸島と台湾に分布しています。
(3. 2016 沖縄県 石垣島) |
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Ajuga shikotanensis Miyabe et Tatew.
ツルカコソウ
本州の温帯草原で見られますが、なかなかレア。
写真の個体は f. hirsuta (Honda) Murata (ケブカツルカコソウ) にあたる訳ですが、今まで毛深くない個体を見たことがありません。
(6. 2018 山梨県) |
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Ajuga taiwanensis Nakai ex Murata
ヤエヤマジュウニヒトエ(ヤエヤマキランソウ)
名前の通り台湾と、中国やフィリピンに分布しており、国内では主に八重山諸島で見られます。
石灰岩地の林内で出会うことが多い気がしますが、はたして。
(↑ 3. 2016 沖縄県 石垣島 ↓ 3. 2016 沖縄県 西表島) |
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Ajuga yesoensis Maxim. ex Franch. et Sav.
ニシキゴロモ
主に北海道から本州にかけて、日本海側の多雪地帯に分布している種類。
ランナーは出しません。
花の色は薄紫~白色と、産地によってやや変異がありそうです。
(6. 2015 新潟県) |
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Ajuga yesoensis Maxim. ex Franch. et Sav. var. tsukubana Nakai
ツクバキンモンソウ
ニシキゴロモの変種で、主に太平洋側に分布しており、一応すみ分けてる感じ。
上唇が発達しないのがニシキゴロモとの違いですが、中間型もあり、なかなか面白いです。
(4. 2012 茨城県) |
<Reference>
Kose et al. 2011 Pollen morphology of some Turkish Ajuga L. (Lamiaceae) and its taxonomic value.
Bangladesh Journal of Botany 40(1):29-33.
Kokubugata et al. 2011
Molecular Evidence for a Natural Hybrid Origin of Ajuga X mixta (Lamiaceae) Using ITS Sequence.
Bull. Natl. Mus. Nat. Sci., Ser. B, 37(4):175-179.