Dendrodris Ehrenberg クロシタナシウミウシ属


今回取り上げるのは海の生き物、みんな大好き後鰓目 Dendrodorididae (クロシタナシウミウシ科)の Dendrodris Ehrenberg (クロシタナシウミウシ属)です。

漢字表記は黒舌無海牛。口部に歯舌と顎板をもたないことに由来するとのこと。ふむ。
属名Dendrodris は、Dendro(=樹木)と、doris(=ギリシャ神話に登場する海の妖精)の2つの単語を合わせたものらしいですね。
ちなみにクロシタナシウミウシ科は側系統群だそうで、今後分類が大きく改訂される可能性があります。うーむ。

去る2019年、晩夏の磯辺で運よくDendrodrisたち3種に出会うことができました。どれもデパートに並ぶ和菓子のような趣で綺麗でした。
が、本やネットで見るような写真は撮れなかったのでした。。






Dendrodoris arborescens Collingwood
クロシタナシウミウシ

黒とオレンジの配色が洒落たイメージのウミウシ。この種はホンクロシタナシウミウシ Dendrodoris nigra Stimpson やマダラウミウシDendrodoris fumata Ruppell & Leuckart と種複合体を構成していましたが、孵化直後の幼生の殻の大きさ等々が異なることにより、独立種であることが確認されました。素人には厳しい区別点ですね…
ホンクロとは色彩パターンがよく似ていますが、クロシタの方が鰓が大きいことで区別できるようです。マダラは名前の通り斑模様があるようです。

(9. 2019 和歌山県)




Dendrodoris denisoni Angas
ミヤコウミウシ

ターコイズ色の斑点があり実に美しい種。
しかし意外と擬態度が高く、様々な藻類が密生する浅瀬では慣れないと発見は難しいです。

(9. 2019 和歌山県)

 



Dendrodoris guttata Odhner 
ヒメマダラウミウシ  


水玉模様が特徴の種。わりと大きく伸びたら10㎝くらいありました。
見つけることができたのは1個体のみ。上に掲載した2種に比べてのっそりしたイメージ。
マダラウミウシとは、斑点の形状で区別してしまいましたが、果たして。

 (92019 和歌山県)
<Reference>
Valdés (2003) Preliminary molecular phylogeny of the radula-less Dorids (Gastropoda: Opisthobranchia), based on 16S MTDNA sequence data. Journal of Molluscan Studies 69 (1): 75–80. 
Brodie & Calado (2006) Dendrodoris arborescens (Collingwood, 1881) (Mollusca: Nudibranchia): larval characteristics reveal a masked porostome species. Records of the Western Australian Museum Supplement 69.